膝の上の恋敵(無機物)を睨みつけると、いまだに裸の男が腹立たしい顔で俺を見ていた。
あー、ムカつく笑顔。
服着ろ、服。
言っとくけど男の裸なんてそんな美しいもんじゃねーからな。
全身ツルツルの男なんか居てたまるかっての。
しかも何これ、イケメンすぎ。
俺をあざ笑っているようにしか見えん。
よって不快。
サヨウナラ。
無言でパタンと本を閉じると、彩香が眉を八の字に下げて首を傾げた。
「季壱...もしかして怒った?」
「別に怒ってねーけど...」
「だって顔が怒ってるもん...」
あー、こういうとこが可愛いんだよな。
不安そうに上目遣いしてくるあたりとかさ。
だから大抵のことは許せるっていうか。
俺、単純だなー。


