今日の教室はいつもより少し騒がしい。
こんな教室の風景を見るのも、今年で何回目だろう。


「あ、未羽おはよー!」


私ーーー澤田 未羽が教室に入ると、足早で駆け寄ってきたのは友人の梨香。
ダークブラウンのセミロングがよく似合う、活発で可愛らしい女の子だ。


「梨香!おはよう」

「今年は去年よりもグレードアップさせようとおもって張り切っちゃった!自信作だよ♩」


梨香は満面の笑みでバッグからラッピングされた透明の袋を取り出す。
袋の中に入っているのは、茶色と緑とピンクのマカロンだ。


「梨香、マカロン作ったの!しかも3色も!それにめちゃくちゃ上手!!」

「へへへ、今年は頑張ったからね〜」


梨香は少し照れ臭そうに頭をかく。


今日は2月14日。そう、バレンタインデーだ。
教室では、至るところでお菓子の渡し合いが行われている。
クッキーをタッパーに入れて流れ作業のように配っている子、早速もらったお菓子を食べている子。
男子は男子で、物欲しそうにちらちらと女子の様子を伺う人がいたり、堂々とお菓子にたかる人がいたり。
タッパーに入ったクッキーが回ってきて、「やったー!」と騒ぐ男子に、心の中で小さく笑ってみたり。


そんなバレンタインに染まった教室は、ほんのりと甘い匂いが漂う。