手に取ると首のところでぐたっと曲がってしまった。
わたを詰めないと…。
丁寧に首を起こして、黒い小さなボタンの目を見つめる。
お母さんのぬいぐるみ。
─「ゆい、さみしくない?」
学校でみんなは休日お父さんが遊んでくれるって知った日、家に帰ってお母さんにそれを言ったら
─「ゆいにこれあげる」
お母さんはにっこり笑って私にクマのぬいぐるみをくれた。
─「これはね。お母さんが小さい頃から一緒にいるクマさんなの。きっとこれからはゆいのことを守ってくれるわ。大事にしてね」
あの笑顔の裏にどれだけの悲しみを抱えていたのか、あのやり取りがどれだけお母さんの支えだったか。
小学生の私は気づくことが出来なかった…
