『一応乃愛は妹にあたるから知らせといただけ。ちゃんと意識はあるから』


ならよかったけど…。


『翼の殺陣の稽古、かなりハードなわけ。スケジュールに空きがないから。そしたら案の定ぶっ倒れた。アイツのことだから、弱音とか吐きたくないし見せたくないんだと思う』


……そうなんだ。


沙羅が言ってたプロ意識が高いっていうのは、間違ってないんだね。


『まー、だから退院して帰ってきても何も言わずにいてやってくれる?お見舞いとか絶対来てほしくないだろーから、あえて病院は教えねーけど』


仁って、本当に性悪エセアイドルのこと理解してるんだなぁ。


『っつーわけで、おやすみ』


「あ、待って。エセアイドルは病気とかじゃないんだよね?」


切られかけた電話を引き留める。


『栄養失調とか熱中症とかそんなもんじゃねーの?たぶん。どうせ明日には稽古復活してるぜ』


仁の言い方も軽いから、別に大したことはなかったのかな。


「そっか。今近くにアイツいる?」


一言言ってやらないと気がすまない。


『いるけど、何で?』


「アイツに言っといて。〝バカはアンタだ心配させんな!〟って」