「乃愛さぁ、この後二人で別の店も行かない?」


突然の仁からのお誘い。


戸惑うしかない。


〝仁は手が早い〟って言葉が脳裏をよぎる。


手が早い人は嫌だ。


「コイツが困ってんだろ。諦めろ」


性悪からの助け船。


感謝したくないけど感謝だ。


「週刊誌に撮られても困るしね」


そこはちゃんとわきまえなきゃ。


週刊誌に撮られて迷惑するのは龍美だけじゃなくて事務所もだしね。


ファンなんか自殺してしまうんじゃないかってくらい熱狂的な人もいると思うし。


「ガード堅いなぁ」


…そうなのかなぁ。


男子とは友達としてしか接したことないからよく分かんないや。


「いいから諦めろ」


しつこく言い続ける性悪を見て、仁はニヤっと口角を上げた。


「嫉妬ッスか?」


「誰が誰にだよ。ふざけんな」


仁を睨み付ける性悪。


頬が赤い。


「お前が俺に」


性悪が仁に嫉妬?


何で?


自分も女性と遊びたいけど遊べないから?