「浮気をされていた」


その結論に至るまでそう時間はかからなかった


「…いや…私は彼の本命ではなかったのだから私が浮気相手なのか…」


泣きすぎて頭がボーッとする


何も考えたくない


なのに全て悪い方向に考えてしまう



「私…どうしたら…」



私は視線を落とし床に転がったままのスマートフォンを握りしめた

キミと手を繋ぐみたいに、ギュッと強く


でも、余計悲しくなって瞳が潤む



「…別れる…べきなの…?」



キミが本命の子と幸せになるためにも


そして、私の幸せのためにも



でも、私の幸せはキミと一緒にいることなのに…



「…」



一瞬、身体だけでも、いいと思ってしまった


二番目でもいいと、思ってしまった


気持ちは手に入らなくても傍にいることができるなら…


けど、キミに気持ちがないことを知ってしまった今、私はどんな顔で会ったらいいかわからない



「……っ」



願わくば、ずっと、よくある恋人のような幸せを感じていたかった


ただ、傍にいれればそれでよかった


なのに、それはできそうにない



「…っ」



頭の中でマイナス妄想が止まらない


悪いことばかりを考えて、いつかはキミから別れを告げられる予感さえもした



…私はキミに別れを告げられたら立ち直れる気がしなかった



「……それなら、私から告げればいいのか…」



私はもう傷つきたくなかったんだ


辛い思いをしたくなかったんだ



いつかくる別れ話を


キミに必要とされなくなる瞬間を


聞きたくなかったんだ



だから私は、私のために、別れることを決意したのだ



私はラインを開き、キミとのトークを見つめた


たくさんの文字を、ただひたすらに綴った



大事な話だから顔を見て言うべきだと思う


けど、大好きなキミを目の前にしたら言える気がしなかった



「だって…」



たとえキミに気持ちがなかったと知っても


たとえキミに本命がいたとしても


たくさんキミに酷いことされて傷つけられても


今、この瞬間も



これから先もずっと



「ごめん…ごめん、……でも、わかって……こんなに、大好き、なんだよ…っ」



気持ちが消えることはないんだから





気が付くとスマートフォンは涙で濡れていた


震える手はそっと送信ボタンを押そうとしていた



「これで…いいんだよね…?」


「これで…幸せなんだよね…?」



打ち込み終わった長い文を見て私はしばらく固まっていた


やがて意を決して画面に触れようとする



息はまるで過呼吸のように乱れ、手は自分でもわかるくらいに震えていた


画面にそっと手を伸ばす



「あっ…!」



すると、小刻みに震えていた指が送信ボタンに触れてしまった



【送信しました】



送った瞬間、また涙が溢れた



「これで、よかったんだよね…」



涙をそっと拭い、キミに送った文を見つめていると【既読】と文字が表示されていた



「うそ…既読、もうついた…?」



いつもなら、送ったその時に既読がつくことなんてない


私は慌ててラインを閉じて電源を切った


いつもはあんなに楽しみなキミからの返信が、今はとても怖い


でも、もしかしたら引き止めてくれるかも、なんて期待もしていた



手は、まだ、震えたままだった