私は付き合ったら友達みたいな関係のまま楽しく過ごせると思ってた

一緒に話したり、笑ったり…
一緒に帰ったり、たまに手が触れてドキドキしたり…


それだけでも幸せだったんだ
そんなことが幸せだったんだ

そんなことを勝手に夢見てたんだ



「××くん…?」

「…」


彼は他の友達に「私」と付き合っていることがバレるのをひどく恐れていた

学校では話すことはおろか、目を合わせてくれることもなかった

ラインだって未読無視や既読無視はあたりまえ

でも、「なんで返信くれないの?」とかは決して言わなかった

嫌われたく、なかったから

しつこいとか、思われたくなかったから


でも…私は寂しかったんだ


下校はお互い時間帯をずらして建物の裏の人気のないところで合流するのが日課だった

会えるのは嬉しかった

嬉しかったけど…


「ユミ、いいだろ?」

「…っ」


彼はいつしか身体を求めてきた


「俺のこと好きなんでしょ?だめ…?」


迫る彼を私は「怖い」と感じた

けれど大好きなキミを拒めなかった

嫌われたくなかったんだ


キミが私を求めてくれる

それで、よかったんだ

これで傍にいれるなら、私は受け入れようと思っていた


涙があふれるのを我慢しながら

「いいよ」

って微笑んだ


ただ、嫌われないために必至になって自分を見失っていた


溢れる涙を、キミはもう拭ってはくれなかった

それでも、気持ちは消えなかったんだ


「××くん、好き…」


そういうと彼は一瞬困ったように微笑んで


「…ありがと」


とだけ言って目をそらした


…「好き」と、言ってほしかったから伝えたのにな


ただ、確かな気持ちが、ほしかった


だって、私、キミに「好き」と言われたこと、ないのだもの



…うすうすどこかで気づいていた

自分が都合のいい女だということに


それでも気付かないふりをして私は精一杯笑顔を作った


身体だけでもキミにとって唯一の彼女でいたかったから