白い息の向こう側

「だーめ。送るからおうち教えて」

「そうやって僕んちを知ろうとしてるの?」

 お、そうきたか。

「それって、私の家を知るために言ってる?」

「……言い返された」

 お? しょげてる。愁いを帯びた表情がまた美少年にぴったりだわ。

「お姉さん。名前、なんていうの?」

「私? 伊東 道代よ」

「ふーん。僕は佐久間 凉っていうの。涼しいっていう漢字」

 あら、普通の名前。私はよく昔の名前みたいとは言われるけど、そんなこと知ったこっちゃないわよ。私の名前に文句つけんな。

 文句とは限らないけど。ただの感想だと思っておく。

「まあいいや。じゃあ送ってくれる?」

 お? 素直に諦めた。他人(ひと)んちに行きたいなんてそれ口説き文句ですからね。そういやこの子、お姉ちゃんじゃなくお姉さんで呼んでるわね。

 ちょっとませてるんじゃないの。