先輩の周りには、かわいい人がたくさんいる。


私なんてただの暇つぶしだし、女慣れしてるくせに。


そんな顔されたら、騙されそうになる。


あなたのペースに、引きずり込まれそうになる。


ドアの開くガラガラ、という音に私は先輩から顔を逸らす。


「あれ?柚月、まだいたの」


入ってきたのは保健室の先生で、私の叔母さんの里美ちゃんだ。


なにも言わない私に首を傾げてから、里美ちゃんは机を挟んで前に座る柳先輩の方をみた。


「ふーん、めっずらしい」


何をどう勘違いしたのかニヤニヤしだした里美ちゃんを私は睨む。


「先輩、もう帰ってください」


「あれ、一緒に帰らないの?」


「帰りません!」


私の声に先輩は笑って、「じゃーね、先生もバイバイ」と言って出て行った。


先輩の顔はもういつも通りに戻っていて。


なぜかわからないけど、胸が少しだけちくりとした。