「朝倉さんが復籍した戸籍の筆頭者があなたの両親のどちらかであると親、子供、孫の三世代の戸籍になってしまい、戸籍法に反する事態になってしまうため、子供さんはその籍に入れないんです」

「その場合はどうしたらいいのでしょうか?」

「朝倉さん自身が筆頭者となって新しい戸籍を作ってそれから家庭裁判所に行って“子の氏変更の申し立て”を行い、申し立て書を記入して頂く形になります。その許可が下りると通知書類が郵送で自宅に送られてくるので、それから市区町村の役場に入籍届けを提出する形で子供さんの籍を朝倉さんの新戸籍に移せることになります」

「いろいろと手続きがあるんですね……。ちゃんとできるか心配ですけど、東條先生に丁寧に説明していただいてやり方が分かり気持ちが楽になりました」

「それなら良かったです。変更の申し立てをしてから家庭裁判所の許可が下りるまでそんなに時間はかからないし日常生活に支障はないので心配はしなくて大丈夫ですよ」

「分かりました。ありがとうございます」

朝倉さんの表情が柔らかくなったのが分かった。

「冴草さん、手続きの流れを今、ざっと書いたんだが、これをタイピングして朝倉さんに渡しといてくれないか?」

「あ、はい。畏まりました」

私は東條先生から紙を受け取り自分のデスクへと行って作業を始めた。それから朝倉さんにそれをお渡しすると、朝倉さんは安心した表情で帰って行った。

「朝倉さん、前に進めそうで良かったですね」

「ああ、そうだな。公正証書もあの内容でいいとのことだから、朝倉さん側と相手側と二部用意を頼む。でき次第、朝倉さんの携帯に連絡をして取りに来てもらってくれ」

「はい。それでは失礼します」