「だが契約結婚とは言え、今日は紗凪が俺の奥さんになってくれた大切な日だから。何か形に残る物をと思ってね」

「聖さん……」

「だから受け取ってくれないか?」

「でも私は聖さんに何も用意してないし、それに……」

そう言いかけた私の言葉を遮ったのは私の唇に、そっと触れた聖さんの人差し指だ。

「紗凪は俺の前で自然体で、そして心から笑っていてくれれば、それだけでいいんだ」

微笑みながら私の目を真っ直ぐに見て、そっと優しく私の左頰を撫でた。そんな聖さんの言動になぜか私のドキドキは加速していく。

「あ、りがとうございます。すごく、嬉しいです」

「気に入ってくれたなら良かったよ」

「つけてみてもいいですか?」

「ああ。つけてあげるから後ろを向いてくれ」

「あ、はい。お願いします」

胸の高鳴りの意味も分からぬまま、私は聖さんにネックレスをつけてもらうことにした。