「これで少しは牽制できたかな」

「京極さん、何でここにいるんですか?」

やっとその質問をすることができた。京極さんはニコリと微笑みながらこちらを見ている。

「ここ俺の父親が経営するホテルだもの」

「えー‼︎」

あまりの驚きに思わず、そう叫んでしまった。そういえば合コンの日、京極さんは一流ホテルを経営する大企業の御曹司だと聞いた気がする。

「でもこの場に居合わせたのは偶然じゃないよ?」

「偶然じゃない?」

「聖に頼まれたの。てか、聞いてよ。聖ったら酷いんだよ。いきなり数時間前に電話して来たかと思ったらさ、紗凪ちゃんと結婚した、親との食事会をここのホテルでする、悪いが悠斗が何をするか分からないから見張っててくれって俺の予定なんかお構いなしに馬車馬のように俺を使う訳!」

「…それで京極さんはここに来たんですか?」

「そう。何でここまでしちゃうんだろうとか思うけど、聖なんだかんだ紗凪ちゃんのことを想ってるみたいだしさ」

「あ、えっと……ありがとうございます」

なんて言葉を返したらいいか分からなくて困った。聖さんが私を想ってる? そんなのあるはずがない。だって契約結婚をしているだけだもの。

「聖から大体話は聞いたけど紗凪ちゃん大変ことに巻き込まれたね。あの家族扱いにくいでしょ?」

「ま、まぁそうですね」

「まぁ気を張りすぎず気楽にいきなよ」

京極さんがそう言って私の頭を優しく撫でたそのとき。