聖さんとお義父さんのやり取りを見て改めてすごいところに嫁いでしまったと思った。まぁ、実際には一年後、私はこの重圧から解放されるけれども。私はこの大役を務め切ることができるだろうか。そう考えるとなんだか憂鬱になってきた。

「紗凪、大丈夫か?」

「え?」

「あまり食が進んでないようだが」

聖さんが耳元でそう囁いて心配そうに私の顔を覗く。

私の目の前に置かれたメインの肉料理、牛フィレ肉とフォアグラのロッシー二。その魅惑の組み合わせにいつもの私ならとっくに食いついているだろうに今日はほぼ手付かずのままだ。

「すみません、大丈夫です。ちょっとお手洗いに行ってきます」

膝に置いていたナプキンを椅子の背もたれに掛けて立ち上がり、家族の皆さんに一礼してその場を離れた。