「まさか父が目をつけた造り酒屋が君の実家だなんてな。流石の俺も話を聞いて君の写真を見せられた時は驚いたよ」

「それって東條さんは見合い相手が私だと知っていたと事ですか?」

「ああ。知っていた。君が働く事務所で君と再会して少し経った頃、父から聞かされていた」

東條さんのまさかの告白に私の中の疑問はますます増すばかりだ。相手が私だと分かっていたならば、なぜ見合い話を断らなかったんだろうか?

「なら何でわざわざ見合い話を受けてここに来たの? 東條さんは私みたいな女嫌いでしょ? なんて君が言いたいのはそんなところか」

「……っ⁉︎」

やはり東條さんの洞察力は凄い。私が考えている事なんて意図も簡単にお見通しだ。

「その顔は図星って事か」

クッと口角を上げて東條さんが笑った。

「まぁ、そんなところですけど」

「ならば答えようか。相手が君だから見合い話を引き受けたんだよ」

「え?」

「単刀直入に言う。冴草紗凪、俺と契約結婚しないか?」