「今まではバラバラな東條家を弥生さんが妻として母としてなんとかうまく繋ぎ止めてくれていたんだ。だけどそれも限界にきてこんな風になってしまったんだと思います」

「ああ、そうなのかもしれない。いつの間にか私は家族のためよりも会社のため…己のプライドと権力を振りかざして家でも会社でも誰の話にも耳を傾けられなくなっていた」

「そして家族の心はバラバラになり、独裁的経営方針に会社では不穏な動きがあった。影山から聞いてました。父さんを会長の座から下ろそうとする動きがあると」

「聖はそれを知っていたのか」

「ええ。だから父さんは俺を跡継ぎにさせようと躍起になっていた」

「ああ。そのとおりだ」

「それでも父さんは悠斗をそばに居させ続けた。それは悠斗の実力を本当は認めているからだ。そして悠斗も父さんを失脚させるチャンスが何度もあったのにそうしなかったのは憎しみながらも父さんに憧れ尊敬し自力で認めて欲しいと思っていたからだろう?」

「……やはり聖兄さんには勝てない。何でもお見通しなんですね」

悠斗さんがそう言って完敗だと言わんばかりに天を仰いだ。

「父さん、悠斗ほど貴方のことを理解し、そして会社のこと、社員のことを考え動ける奴はいません。ずっと一番近くであなたの背中を見てきたのですから」

そんな聖さんの言葉を最後に長い沈黙が続いた。

「聖、私はやっと目が覚めたようだ。悠斗、一緒に会社を支えてくれるか? 弥生、美玲……そして聖、紗凪さん、こんな私をもう1度だけ受け入れてくれるか?」

その沈黙を破ったのは聖さんのお義父さんだった。

お義父さんのそんな言葉に目頭が熱くなる。東條家の皆の心がまた繋がり元に戻る事を予感したその日、輝かしい未来へと続く道が私たちの前へと広がっていく気がした。