エリート弁護士は契約妻への激愛を貫きたい

「もしかして紗凪ちゃんキスされるかも、とか思った?」

「……っ⁉︎」

次の瞬間、耳に届いたそんな声に私は目をゆっくりと開けた。そんな私の目に飛び込んできたのは、とてつもなく至近距離にある、悪戯な笑みを浮かべて私を見る京極さんの顔で、大根役者な私はその動揺を隠す術なんて持ち合わせてはいなかったりする。

「紗凪ちゃんって分かりやすいね?」

そのあからさまな動揺は目の前にいる京極さんにも伝わってしまっていたらしい。

「いや、いやそんなつもりじゃ」

今更ながら否定したとしても後の祭りだ。いや、どこかでそんな風に思ってしまった妄想女だということは認めよう。

「紗凪ちゃん俺とキスしたいなら続きは、ここをふたりで抜け出してからにしようか?」

戸惑う私の耳元で京極さんがそうつぶやいた。