エリート弁護士は契約妻への激愛を貫きたい

ーーープルルルル

突如その場に鳴り響いた携帯の着信音で、その状況に一気に心音が高鳴った。

これは非常にヤバい。何故ならば鳴り響いた携帯の持ち主は私なのだから。

京極さんの鋭い指摘からすり抜けた私は携帯を握りしめたまま化粧室に逃げ込んでいたのだ。ディスプレイに目をやれば表示された名は凛華で、恐らくなかなか席に帰って来ない私を心配して電話を掛けて来たのだろう。

いや、今はそれがありがた迷惑と言わざる得ない。だってこの状況からして盗み聞きしていたのがバレてしまうではないか。

こうなったらバレる前にもう一度化粧室に逃げ込むしか打開策はない、咄嗟にそう思いついて体勢を変えたそのとき。

「あれ、紗凪ちゃん? そんなところで何してんの?」

逃げ込もうと体勢を変えた私の前にひとつの影が落ちた。