「すみません。話の途中ですが私、行くところがあってそろそろ……」

兎に角、悠斗さんから離れようとそう話を切り出したそのとき。

「余計なことを言ったついでにもうひとつだけ言ておきますね。聖兄さんが今、会ってるのは聖兄さんの昔の恋人です」

「……っ⁉︎」

「彼女の名は七瀬莉乃さん。とても綺麗な方ですよ。ふたりは付き合っていた当時、周囲がとても羨むくらいにお似合いのカップルだったんですよ」

「……」

悠斗さんから語られたその事実。やはり、そうだったんだ。あの日の事務所でのやり取りが頭に浮かんだその瞬間、推測が確証に変わり胸がチクリと痛んだ。そしてその痛みは胸の高鳴りが増すと共ににどんどん激しさを帯びていく。

「そんなふたりが再び、運命の再会を果たしたわけです。紗凪さん、頑張らないと聖兄さんに捨てられてしまうかもしれないですね。聖兄さんと紗凪さんは政略結婚ってやつなんでしょう?」

「……っ⁉︎」

思いもしなかった悠斗さんのその発言に驚いて私は目を見開いた。