「僕も嫌われたものですね。そんなにあからさまに嫌な顔をしなくてもいいんじゃないですか?」

「……そのつもりはないですけど、そう思わせてしまったのならすみません。悠斗さんも今、仕事帰りですか?」

「いや。家に帰るのが嫌で、ぷらっとしていただけですよ」

「そうだったんですね」

そう、私が偶然鉢合わせてしまったのは聖さんの弟の悠斗さんで食事会での一件があるから正直、あまり悠斗さんに良い印象はない。

向こうも私の事を良くは思っていない事はこないだのあの態度で分かるし、一刻も早くこの場を離れたいのが本音だ。

「紗凪さん、不機嫌に見えますがもしかして不機嫌な理由は“あれ”ですか?」

「……“あれ”とは何でしょうか?」

突然、悠斗さんが意味深なことを言い出したことに私の意識は悠斗さんへと移る。

「聖兄さんに放ったらかしにされているから」

「放ったらかしにされている?」

「今、聖兄さんは実家で女の人と楽しそうにしてる訳じゃないですか。そしたら紗凪さんだってあまり気分がいいものじゃないかなと」

「……っ⁉︎」

聖さんと女の人が聖さんの実家に一緒にいる?

「あれ、その顔はもしかして知らなかったとか? なら僕、余計な事を言ってしまいましたね。すみません」

そんな言葉とは対照的に悠斗さんの表情は何処か楽しげに見える。明らかに私の反応を見て楽しんでいるようで段々、腹ただしくなってきた。