ピンポーンー

時刻は十六時少し前。事務所のインターホンがなり私は階段を下りて事務所の玄関へと向かった。

「あ、今日十六時から法律相談の予約をしていた七瀬(ななせ)といいますが……」

「七瀬様ですね。お待ちしておりました。さぁ、こちらへどうぞ」

私はそう言って七瀬さんを中へ入るように促した。相談に来るのは初めてという言葉でどこか緊張した面持ちの彼女。長身で華奢でモデルのように綺麗な方だ。

歳は私と同じか少し上、そんな感じだろうか。そしてそんな七瀬さんの横には、七瀬さんにそっくりなクリっとした目が特徴的な可愛らしい五歳くらいの男の子がいた。

「こんにちは」

私がそう挨拶をするとその男の子はお母さんの陰に隠れた。どうやら人見知りらしい。

「ほら、ご挨拶は?」

「……こんにちは」

お母さんに促され、照れながらも挨拶を返してくれた男の子。

「お名前は何て言うの?」

「ななせ…そうや」

そう言って蒼弥(そうや)くんは恥ずかしそうにはにかんだ。

「お母さんが先生とお話ししている間、私とお絵かきとかして待っていようか? お絵かきは好き?」

「うん、すき……」

少しずつだけど私の目を見て話に反応してくれるようになった蒼弥くん。

「なんか人見知りですみません。先生に相談している間、蒼弥の事を宜しくお願いします」

七瀬さんはそう言って申し訳なさそうに頭を下げた。蒼弥くんを預けようと思っていた方が急に都合が悪くなり連れて来る形になったそうだ。

ただ相談内容が離婚問題なだけに話の内容が段々と分かるくらいになっている蒼弥くんには聞かせたくはないだろう。なので七瀬さんが相談している間、私が見ていることになった。

「いえいえ。お気になさらなくて大丈夫ですよ? では、こちらの部屋で先生がお待ちですのでどうぞ」

「あ、はい。失礼します」

トントンとノックし、部屋の中へと七瀬さんを案内したそのとき。