男兄弟がムリなら、わたしが男に生まれたかった。
そうしたらきっと、いまとはまるで違う人生だっただろう。
短い命だったとしても、もっと笑って過ごせたはずだ。
わたしは、早く死にたかった。
「おい、有馬。箸止まってんぞ。ただでさえもやしなんだから、ちゃんと食えよ?」
柳瀬くんの大きな手が、有馬の背中をバシバシと叩く。
細い有馬の身体は大げさなくらい揺れて、むせながらも苦笑いを浮かべていた。
「わかってるよ。ちゃんと食べてるって」
「もっと食え! 俺のパン分けてやろうか?」
豪快に笑う柳瀬くんに肩を組まれ、有馬は若干迷惑そうにしながら「いらない」と笑う。
ふたりは小学校からの付き合いらしく、仲が良い。
柳瀬くんから一方的に絡んでいる感じだけど、有馬も慣れたように受け入れている。
迷惑そうな顔は芝居がかっているし、どことなく嬉しそうにも見えた。
わたしや久保さんよりも、遠慮のない関係なのがよくわかる。


