大学くらいって何だろうなあと、その言葉を聞くたび考える。
大学が最低限なら、その上には何がそろっているんだろう。
「……やっぱり、進学は考えられません」
わたしの答えに、飯塚先生はあからさまに落胆の色を浮かべた。
もしかして、生徒の進学率にノルマがあったりするんだろうか。
そんなことを考えてしまうほど、先生は目に見えてがっかりしている。
「そうか。でも就職にしたって、どういう職種を希望するのかくらい書け」
「職種……」
言われて真っ先に思い浮かべたのは、お母さんの仕事着だった。
真っ白なナース服。小さな頃から見慣れていた、いちばん身近に感じる職業だ。
あの穢れのない色をした服に、憧れていた時もあった。
でもそれは何も知らず、自分が何者であるかなんて考えたこともない、優しい世界に生きていた頃の話だ。
一瞬窓の向こうのきれいな空に目をやって、それから雑然とした職員室内に視線を戻す。
まるで夢から現実に戻るように。


