肉付きの良い手で腕をつかまれ、問答無用で引きずられる。
「ちょ、ちょっと待ってください……っ」
なんて力だろう。振りほどけもしない。
断る隙もない勢いに、完全に負けていた。
「お兄さんの分も用意してますから、どうぞ!」
「あ、いえ。僕はほとんど濡れていないんで、大丈夫です。お気遣いありがとうございます」
「あら、そうですか? じゃあお姉さんだけこちらに」
おばさんに引きずられながら、店に入る直前、有馬の方を振り返る。
いつの間にかいなくなっていた猫が、またいつの間にか戻ってきていて、有馬の足にすり寄っていた。
まるで慰めるように。
それを見降ろす有馬の表情は、前髪に隠れて見ることはできなかった。


