額から垂れてきた雫を目元でぬぐう。
泣いていると勘ちがいされたくなかった。
年寄りに怒鳴られることには慣れている。
さすがにバケツで水をかけられたことはないけど、泣くほどショックは受けていない。
それに、わたしも悪かった。
本当のこととはいえ、確かに汚い汚い言いすぎた。
「わたしは助けてほしいなんて思ってない。余計なことをしないでよ。親切の押し売りなんて、迷惑なだけだから」
自分でも辛辣だなと思ったわたしの言葉に、有馬からまたあの困ったような微笑みが剥がれ落ちる。
仄暗い光を奥の方に宿した瞳を、正面から見据えた。
有馬の血色の悪い薄い唇がうっすら開く。
何かを言いかけた時、隣りのお店からおばさんが戻ってきた。
そして抱えていたバスタオルを、バサバサと何枚もわたしにかけてくる。
「もう、本当にごめんなさいね~! うちのおばあちゃん、ちょっと偏屈なところがあって。たまにお客さんともめたりするんですよお。本当困っちゃいますよね。あとでしっかり怒っておきますから。とりあえず、風邪を引いたらまずいし、うちの店入ってくださいね。着替えも用意しましたから、どうぞこっちへ!」


