「平気平気。久保さんは掃除を続けて」
有馬があたしの後ろから離れ、立ち上がる。
そこでようやく、ずっと有馬に寄りかかっていたことに気付き、何を呆けていたんだと自分を罵った。
「でも、先輩たち濡れちゃってますよ?」
「いいから。大丈夫だよ、ありがとう」
有馬の白い手が、久保さんの小さな頭に乗る。
おだんごを避けるようにしてそっと撫でる手の動きは、慈愛に満ちているように見える。
久保さんは照れくさそうに笑い、元の持ち場に戻っていった。
彼女はきっと、有馬を疑ったことなんてないんだろう。
素直に有馬の手を受け入れた彼女は、やっぱりあたしには眩しく見えた。
素直な良い子だと思う。
あたしとは正反対の久保さん。
わたしのことを嫌いな有馬は、きっと彼女のような子が好きなんだろうなと、ぼんやり思った。
「大崎さん。立てる?」
ごく自然に差し出された白い手を、じっと見る。
久保さんのように受け入れることは、わたしには出来ない。してはいけない。


