嫌いな相手にも気を遣える有馬はやっぱり、悪い奴ではないんだと思う。
なら悪いのは、そんな有馬に嫌われるわたしなのかな。
なんとなく、有馬と並んで立つと、緊張して肩に余計な力が入る。
誤魔化すようにゴシゴシと力任せに汚れを拭くと、シャッターがガシャガシャ音を立てるから「もうちょっと優しくしようか」と苦笑いされた。恥ずかしい。
「ご、ごめん。えっと、じゃあわたし、上の方やるね」
「あ。上は危ないから僕が……」
「大丈夫、大丈夫! わたし高いとこ好きだから全然平気だしっ」
というか、脚立にのぼって少しでも有馬と距離をとりたかった。
下で並んでいるとどうしても、彼の動きが気になって落ち着かない気持ちになるから。
脚立を立ててひょいひょいと上る。
高いところが好きなのは本当だった。
小さい頃には、庭の梅の木に登ってて遊んでいたこともある。
梅の収穫を手伝った記憶もおぼろげながら残っていた。
梅は苦手だけど、とるのは楽しかったんだ。


