「今日は商店街の清掃だから少し歩くけど、大丈夫?」
「……は?」
「天気は良いけど、風がかなり強いみたいだから。上着があるなら持っていった方がいいかもね」
窓の向こうに目をやって、有馬がそんな心配をしている。
さすが聖人。
嫌いな相手でも、身体の心配をしてくれるらしい。
でもいまわたしが気にしてるのは、悪いけど寒さなんかじゃないのだ。
「商店街って言った? まさか、あのぼろいアーケードの?」
「そうだよ。言ってなかったっけ? 星町商店街。僕、あそこの揚げたてコロッケ好きなんだよね。大崎さんは食べたことある?」
揚げたてコロッケが美味しいのはわたしも知っている。
肉じゃがコロッケが好きで、美咲には邪道だとバカにされたけど。
でもやっぱりいまは、コロッケが美味しいことはどうでもいい。
それより重要なのは、星町商店街の掃除をしに行かなきゃいけないってこと。
「食べたことはあるけど……。少しっていうか、あそこまで20分近く歩くじゃん」


