「でしょう。いっぱい獲って、梅酒と、梅シロップを作るよ。有馬にもおすそわけするから、がんばって獲ってね」
「梅酒か。祖父が喜びそうだよ」
「喜んでもらえるといいなあ。うちのお母さんとおばあちゃんも好きでね。前はよく晩酌してたんだ」
この梅でうまく梅酒が作れたら、またふたりが夜に居間で、穏やかに晩酌をする姿が見られるだろうか。
お母さんは今日仕事に行く前「梅、楽しみにしてるわ」とウキウキした様子で言っていたから、きっと大丈夫だろう。
気合をいれて取らなければ。
「あ、有馬は上の方ね。わたしは下の方を獲るから。優しくもぎとるんだよ。力はいれないで」
「柳瀬じゃないんだから、大丈夫だって」
梅を握りつぶす野球少年を想像し、ふき出した時。
縁側から呼ぶ声がして、有馬と一緒に振り返る。
そこでは藤色の訪問着を着た祖母が、眩しそうにこちらを見ていた。
「いくる。おばあちゃん、ちょいと昔のお教室の知り合いに会いに行ってくるよ」
「わかった。行ってらっしゃい」
「ああ。有馬くん。梅の収穫、手伝ってくれてありがとう。ゆっくりしていってちょうだいね」


