誰にも近くに来てほしくないと思っていたのに。
気づいた時には、すぐ横に猫がいた。
鳴かずにじっと、いまにもこと切れそうな有馬を見つめている。
動物の瞳ではないと思った。
どこか人間くさいと思っていたけれど、それともまるでちがうひたすら凪いだ目。
もっと高みからわたしたち人を見ているような、そんな目をしている。
あっちに行ってよ。邪魔なんだよ。
有馬の命を奪わないで。
与えもしないのなら、近づかないで。
もう有馬をこれ以上、苦しめないで。
「……有馬の力が必要なの。有馬となら実現できるって、そう思う。本気だよ。本気でそう思ってるの。だからお願い。お願いだから。生きてよ、有馬。わたしの命を、半分もらって。わたし、あと百年は生きるから。半分こしたら、お互いあと五十年は生きるよ。六十七歳って、定年もすぎてるよね。それだけ生きられれば充分じゃない? わたしのあやふやな夢だって、実現できるくらいには長いと思うし」
わたし、根性なしだけど。
それでも五十年くらいならなんとかがんばれると思う。
有馬と一緒ならなおさら。


