手すりから身を乗り出し、下を見る。
灰色のアスファルトに力なく投げ出された手足。
ぴくりとも動かないそれにゾッとして、迷うことなく歩道橋を駆け下りた。
歩道の脇に佇む猫の横を通り過ぎ、ガードレールを越えて道路に飛び出す。
車を確認する余裕はなかった。
派手にクラクションを鳴らされたけれど、おかまいなしに有馬の元へ駆け寄る。
黒いズボンに白いシャツ姿の有馬は、うつ伏せの状態で倒れていた。
頭のあたりからじわじわと広がっていく濃い色のそれには、見覚えがあった。
「……有、馬?」
有馬らしきものの傍らに、膝をつく。
車はわたしたちを避け、躊躇いを見せながらも走り去っていく。
薄茶の瞳はかろうじて、開かれていた。
細く、どこか遠くを見るように。
この目にいま、何が映っているのだろうか。
生だろうか、死だろうか。
有馬。死はどんな形をしているの?
「ねぇ、有馬。聞いて」
動かない指にそっと触れる。
その時はじめて、有馬の右腕がおかしな方向を向いていることに気がついた。


