有馬が歩道橋の手すりに身を乗り出したのだ。
まるでその下、車がひっきりなしに通る道路へと、吸い寄せられるように。
「だめぇっ!!」
動かない猫を飛び越えて、歩道橋の階段を駆け上がる。
何度も踏み外しそうになりながら、段を飛ばして上を目指した。
上に着いたと同時に有馬がこちらを見た。
何もかもを諦めたような目に、私を映す。
名前を呼んだ。有馬の名を叫んだ。
足が動かない。いや、動いているけれどひどく遅い。
もっと早く動け。有馬の命を掴むために。
手を伸ばす。
有馬に向けて、必死に手を伸ばした。
そんな私に有馬は、微笑んだ。
いつものあの、困ったような不自然な笑い方ではなく。もっと自然で柔らかな、本物の笑顔だと思った。
そして、有馬は落ちていった。
ゆっくりと視界から消えていく有馬の背中には、やっぱり羽が生えているように見えた。
「有馬―!!」


