「とりあえず、保健室だな」
「悪い……」
信頼しきっているのがよくわかる。
有馬は完全に柳瀬くんに身を任せ、彼に寄りかかり目をつむった。
野球部で鍛えた大きな体は、男にしては細すぎる有馬に寄りかかられてもびくともしていない。
「うちのクラスの奴、バケツとモップ、ここに置いといてくれるか? あとで俺、掃除するから」
周囲を見回しながら柳瀬くんが言うと、近くにいた男子数名が「掃除は俺らでやっとくよ」とさっそく掃除道具をとりに走っていく。
それに「頼んだ」と返し、柳瀬くんはわたしの方に顔を向けた。
「大崎さん。うちの担任に知らせといてくれる?」
「う、うん。わかった」
「よし。じゃあ有馬、行くぞ」
有馬はもう答える気力もないようで、目をつむったまま柳瀬くんに連れられて保健室へと向かっていった。
まるで死にかけているように真っ青な顔をしていた。
ざわざわと、胸が落ち着かない気分になる。
ただ、有馬が心配だった。
心配することしかできない自分が、歯がゆかった。


