死んだ時だろうか。
死んだ時ようやく、わたしたちは解放されるのだろうか。
そんな考えが浮かんだ時、ベッドの上で眠っていたひいばあが咳き込んだ。
ハッと顔を上げ、のぞきこむ。
眠っている。
けれど苦しそうに、また何度か咳き込む。
「ひいばあ。苦しいの? 大丈夫?」
身体を横に向かせて、背中を撫でた。
ボコボコと背骨の浮いた小さな背中を、何度も、何度も。
「ごめんね、ひいばあ……ごめんね」
どうして生と死は、平等じゃないんだろう。
きっと誰にも平等であれば、みんな安心して生きて、安心して死んでいけるのに。
有馬が罪悪感を育てながら生きる必要も、わたしがあらゆる人を責めながら生きる必要もないのに。
ひいばあの苦しそうな弱い咳は、その夜いつまでも続いた。


