有馬がわたしの手を、拒絶しない限りずっと。
けれど、ここまでらしい。
有馬のおじいさんを押し切ってまでここにいる正当な理由は用意できそうになかった。
無力さを噛みしめながら、諦めて立ち上がる。
「あの、有馬くんは……」
「大丈夫。この子もすぐに帰らせるよ。心配をかけたね」
「いえ。じゃあ、わたしはこれで……。有馬。また、明日」
やっぱり、返事はない。
もしかしたら聴こえていないのかもしれない。
失礼します、と頭を下げる。
有馬のおじいさんは、孫に向けるのと同じ優しい目で、わたしを見送ってくれた。
けれど有馬は最後まで、顔を上げることはなかった。
後ろ髪引かれる思いとは、こういうことを言うんだろう。
わたしは何度も振り返りながら、エレベーターに乗りこんだ。
有馬が心配で、心配で心配で、たまらなかった。


