明日死ぬ僕と100年後の君


張りのある声はやっぱり若々しい。

そして迫力のある目元が、有馬を映して優し気にゆるんだ。


「夕星」


たぶん、有馬のおじいさんだ。

この病院の医院長で、経営者でもある有馬の祖父。


唯一の肉親に呼ばれても、有馬は顔を上げない。

おじいさんは仕方ないなというようにため息をついたあと、こちらを見た。


「夕星の、お友だちかな?」

「は、はい。あの、たまたま事故に居合わせて……」

「そうか。この子に付き添ってくれてどうもありがとう」

「い、いえ。そんな……」

「もう夜だ。これ以上遅くなるのは良くない。お嬢さんはもう帰りなさい」


有無を言わせない響きがあった。

優しげに微笑んではいるけれど、その奥に冷静さと頑固さを感じさせる。

有馬にそっくりだ。



「あの……でも」

「なんなら車で送らせよう。お家はどのあたりかな?」

「いえ! 大丈夫です! 自分で、帰ります……」


繋いだままだった有馬の手を、躊躇いながら離す。

できればずっと、この手術が終わるまで繋いでいてあげたかった。