頭を下げる女性に、有馬も深く下げ返し、わたしの方へ戻ってくる。
有馬の肩越しに女性が頭上げると、同時に彼女の胸から光る玉が浮き出てきた。
ふよふよと飛んできたそれは、有馬を追い抜き、その手に収まる。
それは蝶が花にとまる姿によく似ていた。
わたしの目の前まで来ると、有馬は光る玉を見せつけるようにして食べた。
こくりと白い喉が動く。
いまこの瞬間、あの女性の1日分の命が、有馬の腹の中に消えたのだ。
そのまま足を止めることなく進む有馬。
わたしは複雑な気持ちでそれに続いた。
「こうして他人の命を勝手に搾取する僕を、君はどう思う? そんなに生に執着して、聖人なんかじゃない、悪魔だって軽蔑する?」
「しないよ。理解はできないけど。でも……」
「でも?」
「可哀想だな、とは思う」
ぼそりと答えたわたしは、後悔した。
どうしてまた、こんな嫌われるようなことを言ってしまうのだろう。
有馬は白い横顔に、うっすら笑みを浮かべた。
この顔はたぶん、怒っている。
そういう感情の動きがなんとなくわかるくらいには、有馬のことを知った。
そう考えれば幾分マシだ。


