迷いながらも、そう訊ねた。
施設にいる時から気になって仕方がなかったことを。
「なんのこと?」
「さっきの施設のこと。おかしいとか、思わないの? 異常だ、気味が悪いって、感じないの?」
あの施設にいる間、変だとしか思わなかった。
ここは一体どこだっただろうかと、一瞬自分がどこに来ているのかわからなくなることが何度もあった。
ここに人が住んでいるなんて、人の生活の場であるなんて、と。
最後まで信じられないまま施設をあとにした。
あれが普通なのだろうか。
施設というのはああいうものなのだろうか。
だから誰も、何も言わないのか。
梅さんの声が、耳の奥のほうにこびりついて離れない。
助けてと、梅の木に向かって手を伸ばす梅さんのしわくちゃな顔が、灰色の目が、瞼の裏に焼き付いて消えない。
3人は顔を見合わせる。
口を開いたのは有馬ではなく、柳瀬くんだった。
「まあ……なんとなく、大崎さんの言いたいことはわかるよ。でもそのうち慣れる。俺も慣れた。慣れないとやってらんないぞ」


