通り雨だったようで、わたしたちが施設を後にする頃にはアスファルトも乾き始めていた。
ただ、わたし足は全身ずぶ濡れになっているのかと思うほどに、重い。
雲間から光が差し込む空のようには、わたしの心は晴れずにいた。
「久保さん、なんか余裕出てきたな?」
「えっ? どこがですか柳瀬先輩」
「はじめたばっかの時は、何するにもオロオロして有馬に泣きついてただろ。こういう場合はどうすればいいんですか!って」
「言ってたねえ。会話でさえ、こう聞かれたらどう答えればいいんですか、とかね」
「そ、そりゃあ最初の頃はひどかったかもしれませんけど、わたしだってちょっとは成長するんですよ」
「怒るな怒るな。褒めてんだからさ!」
「そうだよ。久保さんはよくやってくれてるよ」
「そう、ですか? なんだか照れちゃいますね」
柳瀬くんに背中を叩かれ、有馬に頭を撫でられる、ふたりに挟まれた小柄な久保さん。
嬉しそうな彼女の声を後ろで聞いていると、どうしてか憎らしい気持ちがわいてきた。


