「……わたし、桜より梅が好きです。華やかな桜も綺麗だけど、ひっそりと咲く梅の花って、いじらしくて可愛いなって。それに、梅は実も食べられますしね」
ムダがまったくないところがいい。
花を楽しんだあと、実も楽しめる。
長く長く、愛でられるところがいい。
まあわたしは、実の方はどうにも苦手なんだけど。
「梅さんの名前、素敵だと思います。……わたしの名前より、ずっと素敵」
いくる。
学校ではひらがな3文字で通しているけれど、本当は漢字一文字のわたしの名前。
生きると書いて、いくる。
大崎生。それがわたしの名前だ。
大崎の女には皆、生という漢字が入っている。
ひいばあの名前は生枝。
おばあちゃんの名前は生子。
お母さんの名前は志生里。
そしてわたしは、生。
こんな名前をつけるから、長生きになってしまうのだ。
ずっと、わたしは自分の名前が嫌だった。嫌で嫌で、仕方なかった。
人はどうして、老人に冷たいんだろう。
お母さんもおばあちゃんも、ここの施設の職員も。どうして老いた人に優しくできないんだろう。


