明日死ぬ僕と100年後の君


有馬はひたすら聞き役に徹しているようで、あの笑顔でうんうんとうなずいている。

久保さんは持ち前の明るさと元気さで、一生懸命話しかけているし、柳瀬くんはいつもの調子の大声で話しかけ船をこいでいたおじいさんをぱっちり目覚めさせていた。


彼らと同じ空間にいるのはなんとなく嫌で、わたしは梅さんを外に連れ出すことにした。

散歩ならそれほど会話をしなくても、なんとか間を持たせることが出来る気がする。


今日はそれほど寒くないけれど、一応ブランケットをしっかりと梅さんにかけ、廊下を進む。

途中何人か、首からネームプレートをかけた施設の職員とすれ違った。

けれど梅さんに声をかける人は誰もいない。

彼らの目には、梅さんが映っていないのかもしれなかった。


大きな窓からバルコニーに出る。

スロープを使って慎重に庭に降りた。久しぶりの車椅子操作に、少し緊張する。

そういえば、ひいばあが寝たきりになってから、家で使っていた車椅子はどこに行ったんだろう。

処分してしまったのか。それともあの物に溢れ返った家のどこかで、埃をかぶっているんだろうか。