ひいばあも認知症だけど、それなりに会話は出来ている。
わたしのことはほぼ忘れてしまっているけれど、声をかければ返事はしてくれるし、会話は成り立っていた。
けれどいま車椅子に乗っている梅という名のおばあさんとは、どうコミニュケーションをとっていいのか見当もつかない。
灰色がかった虚ろな目を、宙に向けるばかりの梅さん。
わたしのことは見えているのだろうか。
じっと小さな身体を観察する。
薄い白髪は櫛なんて通されていないんだろうとわかるほど、あちこちに跳ね、そしてべたついている。
あまり清潔とは言えない匂いが梅さんからはした。
お風呂に毎日は入れないとしても、きちんと清拭をしていればここまで匂うことはない。
「あの……はじめまして。わたし、大崎いくるっていいます。高校2年です」
「あー……」
「何かしたいこと、ありますか?」
「てー……」
まいったな、と有馬たちの方を見る。
彼らはこのロビーで過ごすことにしたのか、それぞれテーブルに着いてお喋りを始めていた。


