有馬に気遣われると、なんだか落ち着かない気持ちになる。
なんでもないと、勢いよく首を横に振った。
「ううん、大丈夫。それで、どうかした?」
「大崎さん介助ははじめてだし、最初は僕と一緒に動こうかっていう確認」
「ああ……ひとりでも平気だよ。うちひいばあちゃんがいて、前に車椅子乗ってたから。こう見えて慣れてるの」
「そうなんだ? 頼もしいね。じゃあ何かあれば僕か、施設の職員さんに聞いて」
それぞれひとりずつ担当し、思い思いに過ごすことになった。
有馬は「お金を盗まれた」とぶつぶつ呟いているおばあさん。
久保さんと柳瀬くんはうつ向きがちなおじいさんと、こっくり船をこいでいるおじいさん。
そしてわたしの担当は、不明瞭な言葉をうなるように繰り返しているおばあさんだ。
さて、どうしよう。車椅子のハンドルを握りながら途方にくれる。
有馬には見栄を張ってあんなことを言ったけれど、わたしが慣れているのは車椅子の操作だけで、認知症のお年寄りの対応じゃない。


