「ってことでさ、番号交換な。このアプリ使ってる?」
「えっ。ま、待って。やっぱりわたし……」
「まあまあ、いいじゃん。交換だけでも。同じボランティア部の仲間なんだし。ついでに有馬の番号も教えとくわ」
「ええっ? いや、いらないって」
知らないところで、勝手にわたしに番号を知られていたら、有馬が嫌な気持ちになるかもしれない。
いまさらかもしれないけど、もう有馬にこれ以上嫌われたくないと思う自分がいた。
「そう言わずにさ。登録だけでもしといてくれよ」
頼むよ。
そう思いのほか真摯な声で言われ、困ってしまった。
それ以上強く断ることもできず、結局ボランティア部全員の番号を登録させられた。
きっと使うことなんてないと思うのに。
それでも「よろしくな」とどこかほっとしたように笑った柳瀬くんを見ると、番号を消そうという気にはなれなかった。
有馬、あんた大切にされてるよ。
家族は亡くなっちゃったようだけど、あんたをこんなに心配してくれている友だちがいるよ。
そのことにちゃんと気づいてる?
もう一度窓の外に目を向ける。
そこには拾いそこなったらしい空き缶が、風に吹かれコロコロと転がっていた。
そして猫はいつの間にかまた、消えていた。


