「どうしてあいつが気になる?」
「有馬のこと? ……わからない。自分でもよくわからないけど、気になるの」
「恋か」
「そういうセクハラ発言もおっさんっぽい」
ニャッと短く声をあげる猫。
いまのはきっと「へっ」と鼻で笑ったんだろうと思う。
おっさんとそんなやり取りをしていると、有馬が不意にこっちを見上げた。
ドキリとして思わず目を反らした先、すぐ近くに大柄な男子生徒が立っていて驚く。
わたしと同じように、窓の外にいる有馬を見下ろしていたのは柳瀬くんだった。
一体いつからここにいたんだろう。
声をかけてくれても良かったのに。
まさかわたしがおっさんと話しているのを聞かれたりしていないだろうか。
助けを求めるように足元に目をやったけれど、薄情な猫は我関せずといったふうに前足で顔を洗っていた。
柳瀬くんが軽く右手を上げると、窓の下の有馬も同じ仕草をして校舎の方へ戻っていく。
その姿が見えなくなってから、柳瀬くんは横目でちらりと私を見た。
彼はまだ何も言っていないのに、なんだかからかわれたような気になって頬が熱くなる。
随分熱心に見つめていたなと、柳瀬くんの目が言っているように感じた。
そんなつもりは全然ないのに。


