「奪うって言っても、1日に1回しか力は使えないし、奪えるのも1日分の命っていう、なんともケチくさいものだったんだけどね」
口元だけで笑った有馬に「誰がケチだ」と抗議する声があがる。
抗議する、声? 誰の?
わたしは何も言っていない。
それなのにすぐ傍から声がした。
しゃがれた男の人の声が。
「ケチじゃないか。どうせくれるなら、命も力もまとめてどーんとくれればいいのに」
「そんなことをしたら、俺が怒られるだろうが」
有馬は腕の中の猫と顔を見合わせ喋っている。
猫も有馬を見上げて口を動かしている。
まるでふたりが会話をしているように見え、わたしは何度も瞬きした。
「怒られるって誰に?」
「上にだよ。俺にも色々あるんだ」
「死神にも上司がいるのか。ということは、おっさんは下っ端なのか」
「うるせぇな。上司とか下っ端とか、そういうんじゃねぇ。ただそういうシステムがあるだけだ」
「システム」
おっさんの反論に、有馬はますます笑った。
心底おかしそうに、笑った。
反対に、猫は嫌そうにぷいと顔を背けて丸まる。
「おっさんだ……」
思わず呟いていた。
あまりの衝撃に、頭も体も錆びついたように動きが鈍い。
「こんなにかわいい猫なのに、声がおっさんだ……」


