「こんなに近くに事故現場があって、びっくりした?」
反応しにくいことを聞かれ、口を閉じる。
びっくりしたというより、怖かった。
ここはわたしの通学路ではないけれど、出かける時にたまに通る道ではある。
日常の中に、突然非日常が落っこちてきたような気分だ。
有馬は怖くないんだろうか。
数年前に家族を失い、自分も自己に遭い大けがを負った場所に立って、人は平静でいられるものなんだろうか。
「ここでね、僕も死んだんだよ」
「……なに、言ってるの?」
「あの時僕も、家族と一緒に死んだんだ。でも、本当は死ぬ予定じゃなかったんだって」
ああ、やっぱりそうだ。
トラウマになっていてもおかしくない場所で、平然としていられるわけがないんだ。
家族を亡くした場所に動揺して、有馬はおかしなことを言っているんだと思った。
だって、有馬はこうして目の前で生きている。
猫を抱いて、喋っている。


