顔の前でぷらんと揺らし「何考えてるんだ?」と当たり前のように猫に問いかけている。
ふてぶてしく金色の瞳を細める猫を腕に抱え、有馬はふたたび遠い目を道路に向けた。
「……4年前、ここで事故があった」
「えっ」
驚いて、わたしも車の往来の激しい道を見つめた。
信号が点滅し始めて、慌てて渡るスーツ姿の男性。
すぐ傍には歩道橋があり、その上を子どもが走り、母親が追いかけている。
その歩道橋を降りたところにあるガードレールには、枯れつつある花束が寂しげに置かれていた。
「僕の家族が死んだ、事故現場なんだ」
大きなダンプトラックが、派手なクラクションを鳴らし、わたしたちのすぐ傍を駆け抜けていく。
いま彼は、なんて言ったんだろう。
いや、声は騒音に紛れてはいたけれど、確かに聞こえた。
でも、そんな……本当に?
整った横顔を見上げ呆然とする。
「ここが……?」


