思い当たることはあったけれど、わたしは何も答えられない。
「施設を出る前だよ。職員の人と僕が話している時、大崎さん離れた場所から見てたんじゃない?」
僕が、またおかしなものを食べるところを。
淡々とした有馬の声に、やっぱり気づかれていたかと、鳥肌の立つ腕をさすった。
何度さすっても、さすってもさすっても、鳥肌はちっとも治まりそうにない。
「どうして君に見えたんだろうね。あれは普通の人には見えないはずなのに」
そんな有馬の呟きに答えるように「ナァン」と鳴いてあの猫が現れた。
毎回いなくなったと思ったら現れて、そしてまた気づいたらいなくなっている神出鬼没の猫“おっさん”。
学校の中に平気で入ってくるし、人の言葉を理解しているような仕草もするし、考えてみれば異様な存在だ。
そういえば、わたしが商店街であの光る玉を見た時も……。
「ああ……やっぱりお前か」
少し不愉快さを滲ませて言うと、有馬はあの乱暴な手つきで猫の首根っこをつかみ上げる。


