聖人なんかじゃなく、有馬も同じ人間なんだって。
そんな当たり前のことに気付くだけだ。
おかしな夢から目が覚めるみたいに。
わたしががっかりしたのはたぶん……期待していたからだ。
有馬夕星が、誰かの為にと本気で願う人ではないかと。
自分が目指すことが許されるような、希望になるんじゃないかと。
期待していた分、商店街でも違うとわかって憎くなったんだって、いまようやく気が付いた。
「……大崎さんは、変わってるね。みんな大崎さんみたいに割り切れていたら、僕も似合わないあだ名で呼ばれることもなかったんだろうなあ」
「そんなの……いまからでも遅くないんじゃないの?」
「そうかもしれないけど、別に変えようとは思わないよ。誤解されて実害があるわけじゃないし。むしろ好都合なことの方が多いからね」
「好都合……?」
それはいったい、どんな時の、何のことを言っているのか。
戸惑うわたしに、有馬は泣きそうな顔で笑って首を振る。
「それに言えるわけないんだ。偽善ならまだマシだ。僕がやっていることはもっと……」


