「でも、偽善っていうのもちがう」
「え。……じゃあ、なに?」
猫が、短く鳴いて有馬の足にすり寄った。
いままでどこに行ってたんだと、突然登場した小さな存在に驚く。
いつの間にか消えて、いつの間にか現れたおかしな猫。
有馬は猫の頭を少し乱暴に撫でて、言った。
「義務、かな」
義務って……何だっけ。
やらなくちゃいけないこと?
前に権利の対義語だって、授業で習ったような気がする。
権利の反対が、義務。
なんだかそこには、それをするかしないか選ぶ自由すらないように聞こえた。
「……何それ。意味わかんないよ。ボランティアが義務なんて、一体誰が決めたわけ?」
「決めたというか、決まってたというか。説明がちょっと難しいな」
「決まってた? 運命だって言いたいの? 聖人だから、神様にそういう役割を与えられたって? ……くだらない」


